なないろ読書手帖

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麒麟館グラフィティー 全13巻 (フラワーコミックス) / 吉村明美

麒麟館グラフィティー(13) (フラワーコミックス)

●あらすじ
札幌に古くから建つ下宿・麒麟館を舞台に繰り広げられる物語。
冷酷な夫の仕打ちに耐えかねて逃げてきた菊子、そんな菊子を偶然拾う麒麟館の管理人妙、麒麟館の住人で次第に菊子に惹かれていく火野、菊子の夫で、かつての妙の憧れの人でもあった宇佐美。
この4人を中心に恋愛・友情・家族など、さまざまなドラマが描かれます。

●ネタバレ感想
再読。大好きな漫画です。いちばん読み返してます。

キャリアウーマンタイプで勝ち気な妙と、家庭的でおっとりした菊子。
Wヒロインともいえるふたりが、運命的な出会いとともに、友情を育んでいきます。
複数の登場人物の視点で物語が描かれており、恋愛だけではない、多くの要素を持っているので、読み手によって受け取り方が全く変わってくると思います。
DV被害に立ち向かう女性の物語、女同士の友情物語、切ない片想いの物語…
ネット上のレビューでも受け取り方は十人十色。

私自身は、妙と宇佐美の関わり合いがいちばん好きで。
ヒロインの恋愛相手なのにここまで徹底的に嫌な奴として描かれたヒーロー(一応)って他に記憶にないです。菊子視点で読めば許せないくらいのDV男だし。
妙は菊子が受けた仕打ちのぶんも含めて、宇佐美に立ち向かってゆく。
最初は傲慢で冷酷な人間だった宇佐美が、妙と関わり合い、愛する事によって変わってゆき、ついには菊子の幸せを願い、解放するに至る…
その人間的成長の過程にカタルシスを感じました。(割と変わった見方かも)

吉村先生は、表情を描かれるのが本当に上手いなぁと思います。
言葉の裏に隠された本心を表情で繊細に表現されるので、読んでて胸にずっしりと迫ります…

女性が苛められたり酷い仕打ちを受ける作品って本来苦手なんですが、麒麟館は別。
状況は過酷だけど、妙も菊子も前向きで、友情が揺るがないからだろうなぁ。