なないろ読書手帖

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満月 (新潮文庫) / 原田康子

満月

タイムスリップもののロマンスが読みたいなぁ、と購入した二冊のうちのひとつがこれ。初版が1984年なので、30年近く前の作品。


●あらすじ
仲秋名月の夜に、高校教師・まりが河原で出会った不思議な男性。
時代劇さながらの出で立ちで杉坂小弥太重則と名乗る彼は、
三百年前の江戸の世からタイムスリップしてきた津軽藩士だった…。
果たしてふたりの恋の行方は…?
北国の街を舞台に繰り広げられる、切ない恋愛ファンタジー。


●ネタバレ感想
時空を超えた恋愛には別れがつきもの。なので、別れの予感は最初からありました。
期限付きの、別れ前提の恋は、結ばれる前提の予定調和の恋より強烈に印象に残るわ。
こういう終わり方も、嫌いではないです。切なくも清々しい読後感というか。
悲しいけど。


なんといっても小弥太の武士然とした潔さ、凛々しさが魅力的でした。その言い回しも。でもいつの間にまりに惹かれてたんでしょうね?
二度と奥さんの元へ戻れないと確信した辺りからかなぁ。
一人称の物語なのでそのへんは推測。


元の時代に戻った小弥太からまりへ、三百年の時を経たメッセージでも届くのかなぁ…
と思ってたけど、まりとの記憶はおそらく消えちゃったので、届きようもなく。
お互い想いあった記憶が消えてしまうのはやるせないな。
小弥太が現代に来た意味はあったのか。。結局結ばれはしなかったし。
意味があるとすれば、小弥太がテシケと結婚して幸せに暮らす為のステップだったのかも。
きっと彼は元の奥さんの記憶もなくして、アイヌの民として一生を暮らしたんだろうな…
そしてまりはゆくゆくは保とくっつくんだろなー。色々切ない。


今年の仲秋名月は9/30らしい。なんとタイムリー!いい時期に読めたな。